変わった顔の
馬の鍵掛けが、
お洒落な雑貨より
欲しかった理由。
みなさん、こんにちは。
今日は、価値についてご報告します。
休日の然別湖への旅の帰り道、
1台の車で友人と帰ってきました。
昨日もにっぽうに登場した、
写真家の友人です。
車を走らせるその一本道には、
左右に北海道らしい景色が広がっていて…
景色を見ながら、気持ちいいですね、と
友人は言っていました。
何度も僕は
「車停めて、写真撮ります?」と聞きます。
でも、友人の答えは、NOでした。
「いや、いいです。」と、ニコニコと
窓の外の景色を眺めています。
なんかそういう気分でもないのかな、と
あまり気にせずに。道中、脇道に逸れながら
雑貨屋さんや家具のお店などに
足を運んでいきます。
すると東京だったら、表参道とか青山にあるような、
お洒落な雑貨や家具が並ぶ店に出会いました。
こんな素敵な場所もあるのか…!と感心していると、
友人は、あまりそのお店に興味がないようで、
店先にいた犬とずっと戯れてばかり。
あれ?雑貨とか家具は違ったかな…?と、
足早に店を出ると、次は近くの道の駅へ。
上士幌の道の駅とはまた違う、
手作り感のある地元の道の駅でした。
すると、友人はそこで
じーっと馬の鍵掛けを見つめています。
民芸品というわけでもないし、
お世辞にも馬のデザインが秀逸というわけでもない。
でも、なんとも愛くるしい顔をしていて、
こんな感じの鍵掛け、ここでしか作らないだろうな、
と思ってしまうような品物でした。
あんなにお洒落な雑貨屋に興味を示さず、
北海道の景色にもカメラを向けなかった友人が、
この馬の鍵掛けに興味を示したことに、
僕は何か感じるものがあって。
そういえば、この友人は上士幌で糠平湖に行ったり、
なんでもない畑の草木を撮ったり、
この季節の上士幌でしか撮れないものを、
ずっと撮っていました。
この人は、この限られた滞在の中で、
いつでも、どこにでもあるものではなく、
この時期にしか撮れないものを撮りたかったし、
この滞在でしか出会えないものを、
手に入れたかったんだな、とわかったのです。
物の価値を「見立てる」というのは、
落語の『猫の皿』という噺で、五代目 古今亭志ん生が使った
まくらのキーワードでしたが、まさにこの友人の見立ては
僕の見立てとは違ったわけで。いわゆる見立て落ち。
そう考えると、上士幌の暮らしにある価値というのは、
多くの人の話を聞いたり、様々な人が遊びに来て、
見出されていくものかもしれませんね。
まずは、この上士幌の暮らしを見てもらうために。
忘れたくない今日を、報告し続けていくべきだと、
改めて思いました。
そして、願わくば、私たちのような家の者だけではなく、
来てくださった方や町の方にも、書いてもらいたい。
様々な視点から、上士幌の語ることが、
また新たな価値の共鳴、共感を生んでいくんだと思います。
ちなみにその友人は
結局、その鍵掛けを買いませんでした。
理由は聞きませんでしたが、
代わりに土地の食物をご実家に
送っていました。
旅先から、その土地の
景色の絵はがきを送るように。
上士幌であることに、
こだわるべきだと痛感した日でしたね。
ここでしか出来ないこと、
少しずつ探していきます。
また報告します。
それでは。